草食系おととの大変身inみえ熊野
活動レポート
【三重県の高校生対象イベント】を開催しました!
一般社団法人旅する学校は、10月8日に「海の森を知り、シーベジたべるフィッシュを美味しく頂く」を目的として、「三重県の高校生対象イベント」を開催いたしました。
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
●イベント概要
豊かな自然に恵まれた三重県。中でも伊勢志摩から熊野古道へ続く海岸線は、イセエビやアワビ、サザエなどの海の幸の宝庫。そして彼らが生きるのになくてはならないのが海藻たちです。その海藻が海の森となる藻場(もば)をつくり、多くの生物たちにとって海のゆりかごとなっています。しかし近年、三重県沿岸では、海の森の減少が急速に進んでいます。原因の一つは、地球温暖化や黒潮の大蛇行に起因する海水温の上昇によって海藻を食べる魚(植食性魚類)が増えていることにあります。ところが、これらの魚たちは、あまり美味しくないイメージがあり、漁師さんも好んで水揚げせず、一般的に流通する機会も少ない魚たちです。
そこで私たちは、これらの魚たちを美味しく食するプロジェクトを通じて、漁師さんたちに積極的に水揚げしてもらい、海藻と魚たちの友好的なバランス関係を目指していきます。そしてこの取り組みを通じて、次世代を担う子どもたちと一緒に海から学び、考え、海といのちを未来へつないでいきます。
本イベントは、魚の処理技術研究およびメニュー開発の位置づけとして開催されました。大学生や高校生などに参加してもらい魚のさばき方や処理技術研究、おいしく食べるためのメニュー開発をします。今回は、処理技術の研究を、鳥羽磯部漁協の協力のもと実施され、試食会メニューでも活用されていました。
・日程:2023年10月8日(日)9:40~16:00
・開催場所:熊野市二木島漁港周辺
・スケジュール:
9:40 〜超小型定置網漁体験
11:30〜自分で獲った魚のさばき方実習およびシーベジたべるフィッシュの捌き方実習
13:00〜シーベジたべるフィッシュ調理と試食
14:30〜 プロジェクト・アイデア出しワークと共有会
・参加人数:地元高校生7名(県立尾鷲2名・県立木本3名・県立紀南2名)
教育関係見学者10名(教育委員会2名・教員6名・教育団体2名)
・協力団体:JF鳥羽磯部漁業協同組合・株式会社ゲイト
●超小型定置網漁体験
近年、三重県の海域では、黒潮の大蛇行や地球温暖化の影響で、磯焼けの原因である植食性魚類が増加しています。午前中は、雨の降る中、超小型定置網漁を自ら体験して、実際に海でどんなことが起きているのかを観察し、感じてもらいました。慣れない中で、元気よく、網を引き上げました。漁では、植食性の魚(シーベジたべるフィッシュ)であるブダイも獲れました。
●お魚さばき体験と試食会
超小型定置網漁体験で獲れた魚を、参加した高校生たちが自分たちでさばいて、食す体験を実施しました。事前学習としてオンラインさばける塾をやっていたこともあり、積極的に、自分たちで獲った魚をさばいていました。意外にも、海辺で生活する高校生でありながら、海や魚とは触れていないこともわかり、はじめての体験ばかりでした。
また、JF鳥羽磯部漁業協同組合の協力で、活魚で漁師さんがあげてくれたものを新鮮なうちに加工したアイゴのフィレを活用した漬けづくりと、アイゴの海苔巻き、サンガ焼き、炊き込みご飯のおにぎりを試食しました。参加した高校生からは、「とても美味しい」「漬けであれば、すぐに自分たちにもできそう」「アイゴは匂いがきついと思っていた印象があったが、全く匂いを感じないし、想像以上に美味しい」というポジティブな声がたくさん出ていました。
●プロジェクト・アイデア出しワークと共有会
大雨のため、予定の会場を変更し、屋内にて開催されました。アイゴのフィレを活用し、食を通じての解決プロジェクトのデザインを考えるアイデア出しのワークショップを実施しました。
ワークショップでは、定置網漁や、シーベジたべるフィッシュの講義や試食を終えて、感じた「感情」について問いかけ、高校生たちは、初めての定置網体験について「楽しい」「心地よい」という感情とともに、海の様々な課題を学んで「苦しい」「もどかしい」という感情も表現されていました。次に、その感情が起きている理由について問いかけました。前者の感情の理由は、海の美しさや、多様な魚種が取れる楽しさについてが原因で、後者の感情の理由は、三重県にいながら地元の海の課題を全く知らなかったことや、自分の持つ価値観や当たり前を疑う経験や学びが原因でした。
その後、この生まれた感情を誰に伝えていきたいかを話し合いました。高校生たちからは、親や同級生、さらには毎日通っている学校の先生に伝えていきたいという声や、企業や世界旅行などをしている経済的に豊かな人たちに伝えていきたいという話が出ていました。そして、最後に、どうやって伝えたいかについて、話し合いを続けていきました。参加した高校生から出てきたアイデアは、「アイゴの漬け」や「地元と連携したメニュー商品開発や販売活動」を活用した食のイベントを、学校の文化祭や、地元で実施されるフェスに屋台出展したり、地元の小中学生を対象にした体験教室の実施などが提案されました。
また、所属する学校の先生に紹介するイベントを企画したり、授業の時間を交渉して、生徒が自分の学校で授業をするアイデアも出ていました。
ユニークなアイデアのいくつかは、今後、実施に向けて継続して活動していくことになり、高校生と一緒に併走していくことになります。
●参加者からの声
締めくくりとして、1日のイベントを通じて参加した高校生から感想を発表してもらいました。
「三重県に住んでいて、今日学んだ課題を全く知らなかった。まずは、家族や学校の仲間に伝えていきたい」
「実際にアイゴを使って、早速メニュー開発をしてみたい」
「地元のイベントを調べて、そこで、ワークショップのアイデアを実践してみたい」
「アイゴを活用した授業を自分の学校で実施してみたい」など、行動変容が期待できる感想に溢れていた
一方、メニュー開発を学校で実施したり、授業づくりに挑戦するにあたり、学校の先生に理解してもらえるか、説得できるかを心配する声が複数上がっていました。
また、このイベントを見学されていた教育関係者からは、
「三重県の校長会で今回のイベントを共有していきたい」「三重県教育委員会として、先生方のリテラシー向上のために、今日のイベントを教員研修として実施してみたい」など、肯定的な意見をいただきました。
定置網漁を指導していただいた地元・漁業者からは、「海が大好きなので、海の課題と高校生が向き合い、解決に向けてのアイデアを考えていく今回のイベントをとても嬉しく思う」という声をいただきました。