草食系おととの大変身inみえ熊野
活動レポート
2024年9月/高校生から小・中学生へ 海の未来と「食」を共に学ぶ「高校生がつくる小・中学生向けイベント(移動教室)」を開催しました
2024年9月15日(日)~16日(月・祝)、「食」を通じた子ども向けの海洋体験宿泊を開催。学校を超えて有志で集まった高校生34名が、1学期に海に関する課題を学び、「食」を通じて課題解決を考えるための学習を行いました。
開催概要
学校を超えて有志で集まった高校生34名が、1学期に海に関する課題を学び、「食」を通じて課題解決を考えるための学習を行いました。そして、課題解決に向けて、夏休みに三重県熊野市二木島町をフィールドに、海の課題を体験し、植食性魚類であるアイゴの商品開発にも挑戦しました。この高校生たちが自らの学びを地元三重の小中学生にも伝え、ともに未来をつくる活動を考えていくために、「食」を通じたイベント(移動教室)を企画しました。
日程
2024年9月15日(日)~16日(月・祝)
開催場所
熊野市二木島町
参加人数
高校生10名、中学生13名、小学生3名
協力団体
マル松潜水CLUB、株式会社ゲイト
高校生によるオリエンテーション
今回の企画は、高校生が我々のパートナーとなり、彼らが中心に企画・運営を行いました。オリエンテーションでは、 三重県の高校生4名(県立津高校、私立三重高校)と東京の高校生6名(私立新渡戸文化高等学校)が、参加してくれた小中学生に移動教室への想いを次のように伝えました。
『海の森・藻場が減少している原因の一つが、海藻を食べてしまう魚たち(シーベジたべるフィッシュ)です。一般的に「美味しくない」イメージがあるため、漁師さんに水揚げされず、藻場はますます減少しています。このままでは三重の海の豊かさを未来に引き継ぐことはできません。しかし、シーベジたべるフィッシュが悪いわけでもありません。そこで、シーベジたべるフィッシュを「美味しく」食べることや二木島を歩くことなどの体験を通じて海の課題と向き合うプログラムによって、海の森・藻場が減少している問題を三重の方々に広く知ってもらいたいです。そして、興味を持ってもらうことで、三重の海を自分ごととして捉えてアクションする人を増やしていきたいです』
三重県松阪市、尾鷲市、熊野市、御浜町、紀宝町から集まった小中学生たちは、真剣に高校生の話を聞いていました。
次に、地域に入る「心得」を高校生たちが考え、参加者に説明していました。内容としては、自分の持ち込んだごみは持ち帰ることや、定置網漁に備えて睡眠時間を確保することなどの生活面の心得とともに、主体性を持つことや、この2日間はアンテナを張り巡らして多くのことを吸収して欲しいというマインド面の心得についても話していました。こちらも、参加した小中学生は、真剣に聞いている様子でした。
その後、高校生たち全員の自己紹介が行われたあと、5グループに別れて、高校生からの以下の質問に、付箋を書きながら、高校生と参加者の交流が始まりました。
・移動教室に期待していること
・移動教室のことをどのように知ったのか
・二木島の第一印象について
参加した小中学生の付箋を見ると、期待していることはスノーケリングや定置網漁、魚さばきを楽しみにしている声が多くありました。イベントの情報は学校で配布されたチラシがほとんどでした。チラシの配布については、各教育委員会(三重県、熊野市、御浜町、紀宝町)のご協力をいただきました。二木島の第一印象については、海がきれい、空気が美味しい、空が青いという、自然に関する感想が多くあったことが印象的でした。
最後に、主催者から、地震発生時の避難場所についての説明をして、プログラムをスタートさせました。
高校生がデザインした二木島ウォーク(スタンプラリー)
高校生たちはスタンプラリーを手段に、二木島の歴史や文化、今回の活動場所になっている施設の紹介をしました。高校生たちが選んだ施設は以下の通りです。
・加工場横の広場(今回のプログラムで魚を捌いたり、調理をする場所)
・荒坂中学校(2014年に休校した学校で地震発生時の避難場所にもなっている)
・津波の石碑(昭和19年に起こった東南海地震を伝える石碑)
・熊野古道
・マル松潜水CLUB(スノーケリングでお世話になる地元のマリンショップ)
・最明寺(県指定文化財や市指定文化財がある。地震発生時の避難場所にもなっている)
・民家(今回宿泊する家屋)
スタンプを押す場所には高校生が待っていて、それぞれの施設の紹介をしながら小中学生との交流をさらに深めていました。小中学生たちは二木島を散策しながら漁村の風景や歴史に触れたり、高校生の解説を聞いて、二木島への愛着を深めている様子でした。
高校生と一緒に海の課題を学ぶスノーケリングと地域の方との交流
地元のマル松潜水CLUBの協力で、今回のメインテーマの一つである藻場と生物の観察をスノーケリングにて実施しました。参加した小中学生はとても楽しみにしている様子でした。スノーケリングについての安全指導を受けた後は、高校生から藻場の現状、藻場の大切さ、そして藻場の再生についての講義がありました。さらには、夏休みの活動で実際に現場で撮影した写真を使って、スノーケリングでの見どころも、説明していました。
浅瀬で練習した後、海中の観察を行いました。磯焼けをしているエリアは、ガンガゼが多い状況であることや、藻場の再生する取り組みも観察でき、生徒たちの心を動かす体験となりました。スノーケリングの楽しさもあって、生徒たちは約2時間、時間も忘れて熊野の海の素晴らしさに触れていました。
また、スノーケリングのあとは、高校生たちの強い希望で、地元の方々へのインタビューを実施しました。高校生が司会をして、今回お世話になったマル松潜水CLUBの代表と、明日の定置網船の船長に取材で、両者の共通する、二木島に生まれ、二木島の海が好きだから、活動しているというメッセージに、高校生たちも、小中学生たちも心を打たれていた様子でした。
高校生が考えるアイゴ商品開発中の試食体験と勉強会
今回参加する高校生は、夏休みに三重県沿岸で海の森(藻場)の減少が急速に進んでいる現状を学び、その解決策として藻場の減少(磯焼け)の原因の一つであるシーベジたべるフィッシュを美味しく食べるために、事前に学校で商品レシピの試作を重ねてきました。高校生たちは、食の専門家にもアドバイスをもらいながら商品開発中のアイゴのつみれ汁と炊き込みご飯を、小中学生に振る舞いました。アイゴ料理を食べてもらいながら、クイズ形式でアイゴのことやアイゴの魅力について高校生たちは力説していました。小中学生は、おかわりをしてアイゴ料理を味わっていました。
定置網漁体験と高校生が教える魚さばき体験
高校生たちも夏に体験している定置網漁体験です。魚の流通の上流部分を知るために、地元漁業者の協力により、定置網漁体験を行いました。小中学生たちは5時の集合にも誰一人遅れることなく、実際に使われている漁船に乗船して出港しました。現場では一緒に網揚げを手伝い、帰港後には水揚げした魚を漁師さんからもらい、自分たちでとった魚を自分たちでさばいて朝食にしました。高校生たちは魚をさばく手伝いをしたり、船に乗らずに残った小中学生と一緒に米と味噌を使って朝食を作ったりしました。朝食づくりでは、火おこしをして、飯盒でお米をたいて、一からみんなで一緒に調理をしました。漁で魚がとれたことを素直に喜び、その魚を漁師さんから分けてもらえたことに感謝していました。小中学生の多くは、自分で魚をさばく体験は初めてで、自分でさばいた魚の味は格別だったようです。
高校生による今後につなげる振り返り会
高校生たちの司会によって、2日間の振り返り会を実施しました。初日と同じ5グループに分かれて、以下の質問に、付箋を書きながら2日間の気づきを共有しました。
・移動教室で学んだこと
・移動教室の体験をどう生かしていくか
・二木島の印象
付箋には二木島の歴史、漁業の魅力、藻場の重要性、アイゴの商品のことなど、今回の移動教室で高校生たちが伝えたいと思っていたこと全てが含まれていました。さらに、今後に繋げたい行動としては、親や友達に今回の学びを伝えることや、今回のようなイベントに友達を誘ってまた参加することなどが書かれていました。二木島の印象には、地域の方々の優しさやとれたての魚をさばいた体験とその魚の美味しさ、さらにはスノーケリングで美しい海中のことが書かれていました。
解散の時は、多くの生徒が「また参加したい」と言ってくれたことがとても印象的で、高校生たちもやりがいを感じている様子でした。
参加した子ども・保護者からの声
参加した小中学生の声
●スノーケリングを初めてやってみて、藻場や魚の現状を見ることができた。実際に見ると、想像とは違っていてとても良い経験になりました。
● 話で聞いていたことが実体験として感じることができて、自分でも知った現場に対して何かしてみたいとさらに思いました。
●今後、また漁師さんなどと関わるようなイベントに参加したいと思ったし、人工的な藻場を作るお手伝いもしてみたいと思いました。
●自分でとった魚だからこそ、いつもとは全然違う味がする。頑張ってとったからこそ、疲れた分が美味しさに入っている気がする。今後魚を食べる時もとってくれた人をすごいな、と思って食べるようになると思う。
保護者の声
●地域で漁業関係の仕事をしております。この地域の伝統文化のひとつである定置網漁を子どもに体験してほしいと思い、参加させていただきました。とても楽しかったようで来年も参加したいと帰宅後話してくれました。旅する学校の皆さんにとって準備が本当に大変だと思いますが、ぜひ活動を継続していただきたいで